福島原発事故に関する緊急の要望書
三月一一日に発生した福島原発の事故は、津波という天災を人災に替えたという点で貴社の責任は極めて重大であります。現在この事故が収束する方向は全く見えず、福島の地元住民及び日本国民を不安の底に落としつつあります。いったい貴社はこの責任を遠い将来にわたって、どうとるつもりなのでしょうか。福島以外にも、柏崎刈羽に七基の原発をかかえている貴社は、原発の安全神話が崩れた今、原発に対して今後新たな対処をしなくてはならなくなるでしょう。つきましては、それに関し私たちは以下のような五つの提言を要望として提出し、然るべき処置を心から望むものです。
一 福島原発の事態の速やかな収拾に全力を傾注すること。
報道によれば事故発生直後、事故の対処に米国から助力の申し出があった際、貴社は自力で解決するから助力は不要と断ったとのことです。そうした慢心と驕りが、この事故をこのように深刻な事態に立ち入らせてしまいました。その責任はきわめて重いと言わざるを得ません。そしてそうであるがゆえに、この事態の収拾に、貴社はいかなる犠牲を払っても、全力を傾けねばなりません。なんにしても貴社は安全、安全と言い続けてきたのですから、想定外などという逃げ口上で、その責任を逃れることは断じて許されないことです。
二 現在及び将来にわたる放射能被害の賠償について全責任をとること。
アメリカのスリーマイル島事故を越え、旧ソ連のチェルノブイリ事故に近づきつつある放射能の外部への放出量は、今後人間の健康に対して、たとえばガン患者の発生に代表されるような重大な被害をもたらすにちがいありませんが、その他に大地や海及び大気を汚染することによって、そこから生産される産物に多大な影響を及ぼし、その生産に関わる事業者に決定的な、換言すれば最終的には廃業といった事態に追い込むことになること必定です。つきましてはこれらの被害に対して全的な責任をとっていただかなければなりません。政府の賠償は原子力損害賠償法の定める範囲内にとどめるべきであって、私たち国民は一私企業の失敗の責任をとる必要はないはずです。貴社には四兆円という連結内部留保の資産があるのですから、それをもとに賠償資金を捻出して下さい。
三 福島第二及び柏崎刈羽の原発の閉鎖を目指すこと
もはや貴社の言う安全という言葉は全国民の信頼を得ることができなくなっています。すなわち原発に安全ということなどあり得ないことを、今回の福島原発事故で貴社が証明したのです。それはまた、同様のことが福島第二でも柏崎刈羽でも起こることが、十分に予測されることを示しています。ついては、両所の原発の運転を速やかに中止し閉鎖するよう決断して下さい。私たちは命を代償とするようなエネルギーを必要とは思いません。もし原発の先行投資を回収するために、今後も営業運転を続けるというのであれば、貴社は命より金を重視する営業方針であるとの理解を、国民は共有せざるを得ません。
四 原発は必要、原発はクリーンで安全という広報をただちに中止すること
貴社はテレビや新聞で、原発は必要であり、クリーンで安全だという広報を毎日のように流していました。そのために、多くの国民はそうであると頭から信じて疑わず、その楽観さが今回の事故発生の落とし穴の一つになりました。
原発がなければ日本の電力は不足するというのは事実ではありません。これまで原発がなくても日本の電力は足りていたのです。たとえば二〇〇四年も二〇〇五年もわが国の最大電力は、数量的には火力だけで賄えていたのです。火力が足りない年でも、それに水力を合わせれば十分に足りていました。すなわち火力と水力を合わせれば、原子力などなくともやってこれたのです。
また原子力がクリーンで安全というのは全くの虚偽であることが、今回の事故で証明されました。
五 電力を自然エネルギーに転換すること
もはや二一世紀は環境の時代に入っています。原子力のウランや火力の化石燃料といった鉱物資源を大量に使い、エネルギーを起こすことは環境制約上きわめて困難になってきています。
「みどり・山梨」
代表 川村晃生
東京電力株式会社・社長殿
東京電力株式会社・山梨支店長殿